金融資産ピラミッドは、(株)野村総合研究所が純金融資産保有額の世帯数と資産規模を各種統計などから推計したものです。
金融ピラミッドの世帯数や資産額の推移をみると、格差が少しずつ広がっていることが推察されましたので、ご紹介します。
金融資産ピラミッドとは?

金融資産ピラミッドとは、預貯金、株式、債券、投資信託、生命保険や年金保険など世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」をもとに、総世帯を5つの階層に分類し、各々の世帯数と資産保有額を推計しています。
世帯数に関して3000万円未満が「マス層」で全体の79%、3000~5000万円が「アッパーマス層」で10%、5000万円以上1億円未満が「準富裕層」で7%、1億円以上5億円未満が「富裕層」で3%、5億円以上が「超富裕層」で0.2%となっています。
世帯数と資産総額をグラフにするとそれぞれの比率が視覚的に分かるのですが、

このグラフを見ると約80%のマス層で全体の約40%の資産額(赤棒グラフ)を分けないといけない状況になっていることが見て取れます。
10%のアッパーマス層は全体の16%の資産を分け合うことになり、7%の準富裕層は19%の資産を分け合い、3%の富裕層が19%の資産を分け合い、0.2%の超富裕層が8%の資産を分け合っています。
格差が広がる金融ピラミッド
2023年以前の金融ピラミッドと比較してみると、少しずつ格差が広がっていることが分かりました。以下が、2021年と2023年の世帯数と資産額とその割合の表になります。
2021年 | 世帯数(万) | 資産総額(兆円) | 世帯数割合(%) | 資産総額割合(%) |
超富裕層 | 9 | 105 | 0.2% | 6% |
富裕層 | 139.5 | 259 | 2.6% | 16% |
準富裕層 | 325.4 | 258 | 6.0% | 16% |
アッパーマス層 | 726.3 | 332 | 13.4% | 20% |
マス層 | 4213.2 | 678 | 77.8% | 42% |
↓
2023年 | 世帯数(万) | 資産総額(兆円) | 世帯数割合(%) | 資産総額割合(%) |
超富裕層 | 11.8 | 135 | 0.2% | 8% |
富裕層 | 153.5 | 334 | 2.8% | 19% |
準富裕層 | 403.9 | 333 | 7.3% | 19% |
アッパーマス層 | 576.5 | 282 | 10.3% | 16% |
マス層 | 4424.7 | 711 | 79.4% | 40% |
世帯数 最下層のマス層が増加
2021年のマス層の割合が77.8%だったのに対して2023年は79.4%と少し増えています。その他に増えている層が、準富裕層以上の部分です。超富裕層は変わりませんが、富裕層が2.6%から2.8%に増え、準富裕層が6%から7.3%に増加しています。逆に、アッパーマス層が13.4%から10.3%に低下しています。
つまり、最下層のマス層の世帯数が増えて、中間層ともとれるアッパーマス層が減り、上層の準富裕層以上が増えているということになります。つまり、真ん中が減って下層と上層が増えていることから、世帯数の格差が少しずつ広がっていると取れます。
金融資産額 最下層のマス層の資産額が減少
金融資産額の割合は、2021年のマス層が42%だったのに対して、2023年は40%と減少しています。その他にアッパーマス層も20%から16%に減っています。逆に増えているのが準富裕層以上で、準富裕層と富裕層が16%から19%に増え、超富裕層が6%から8%に増えています。
金融資産額の面では、下層のマス層とアッパーマス層の資産額が減少し、準富裕層以上の資産額が増えています。つまり、金融資産額の面でも少しずつ格差が広がっていると言えます。
いつの間にか富裕層
一般の会社員が、近年の株式相場の上昇を受けて、運用資産が急増したため富裕層になった層のことを「いつのまにか富裕層」と名付けています。富裕層以上の世帯の1~2割がいつのまにか富裕層と推察しています。
いつのまにか富裕層の特徴のひとつは、給与収入の範囲内でこれまでと変わらない生活スタイルを維持しています。あまりよくない特徴として、金融機関や親族・知人のすすめで投資していてあまり関与していない人も一定数おり、商品特性やリスクの理解が不十分な場合があります。また、金融リテラシーが高くても、急増した金融資産の適切な分散投資方針などが十分でないケースもあるとのことです。
増加が見込まれるスーパーパワーファミリー
都市居住で世帯年収3000万円以上の大企業共働き世帯のことを「スーパーパワーファミリー」と定義しています。消費性向が高く、不動産や高級消費財を積極的に購入する「スーパーパワーファミリー」は、女性の社会進出の加速や働き方の多様化に伴う就労機会の増大によって、今後も増加が期待されます。としています。
スーパーパワーファミリーのような超富裕層の予備軍が生まれています。2021年から2023年の超富裕層は世帯数が変わらないまま資産額は増えている傾向を見ると、今後はどんどん金融格差が広がっていくことが推察されます。
引用:野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/files/000042177.pdf
コメント