バティスト・ヴィヒトさんがThe Poor Swissの「Updated Trinity Study for 2025- More Withdrawal Rates!(2025 年に向けたトリニティ スタディの更新 – 引き出し率がさらに増加!)」でトリニティスタディの2024年版ともいえるものを公表していたのでご紹介します。
元のトリニティスタディは、1995年までを研究対象としています。つまり、30年以上も前の研究になります。一方で、こちらは1871年~2024年までのデータを使用しており、元の研究よりも多くのデータを使用しています。
最新のシュミレーションでは、期間も50年という長い期間も考慮しています。元の研究では最長30年間のシュミレーションでした。
トリニティスタディとは
トリニティスタディは、1998年にアメリカのトリニティ大学の教授3人によって発表されました。株と債券に投資(0~100%の間で割り振り)をして、引き出し率3~10%/年の場合10~30年間のそれぞれで、どの程度の確率で資産を維持できるかを調査した研究です。1926年~1995年までの70年間の株や債券・インフレなどのデータを研究対象としています。
結果としては、株75%債券25%の割合で資産を運用した結果が最も良く、引き出し率4%であればインフレを考慮しても、資産が枯渇する可能性は極めて低い(2%程度)というものでした。
平均で言えば、30年間、資産の4%を年に1回引き出しをしながら運用しても、9倍ほど資産は増える結果となりました。
1998年のトリニティスタディについては、以下の記事にまとめています。
2024年版トリニティスタディ
トリニティスタディは1995年までのデータを使用しており、少し古いデータになります。「2025年に向けたトリニティスタディの更新」では、1871年~2024年までのデータを用いて検証しています。また、退職後の期間が30年よりも長くなることも想定されるので、50年というさらに長期間のデータを使用しています。また、年1回引き出しではなく、より実践に則した毎月引き出しで計算しています。
2024年までの30年間では、引き出し率4%までは高確率

1871年~2024年までの全データを使用して30年間の引き出し率を割り振って成功率をシュミレーションした結果です。株式50%以上であれば、引き出し率3~4%までは、95%以上の確率で成功する結果となりました。引き出し率5%を超えると成功率は、80%を下回ってしまいます。(インフレを考慮しなければ、引き出し率4%までは、90%以上の確率で成功していました。)
40年間では、引き出し率4%では成功率90%以下

30年よりさらに長い40年のシュミレーション結果です。40年は30年と比べて引き出し率4%でも成功率は低くなっており、株式100%or株式75%債券25%で引き出し率4%でも成功率は90%程度となっています。成功率が100%近くなるのは、引き出し率3.6~3.7%程度です。
さらに長い50年間では、引き出し率3.5%が最適

40年よりもさらに成功率は下がります。株式100%or株式75%債券25%で引き出し率3.5%であれば、成功率は98%を超えます。しかし、引き出し率4%では、株式への配分を多くした株式100%or株式75%債券25%でも成功率は80%半ばあたりです。
2024年までの30年間の平均リターンについて

1000ドルを100%株式に投資をして30年後の最大値(青)、平均値(緑)、中央値(オレンジ)についてシュミレーションしています。最小値については、どの条件でも0です。
引き出し率3.5%の場合、30年後の平均リターンは6,700ドルです。これは、毎年3.5%を資産から引き出しながらも、資産は約6倍に増加しました。
40年間の平均リターン

30年のリターンと比べると全ての値がかなり高くなっています。全て約2倍高くなっています。追加投資をしていないのに、驚くことに10年で2倍になっています。長期で資産運用することで雪だるま式で資産が増えていきます。
最悪の50年間ではどうなる?

各ポートフォリオの最悪な50年間では、株式100%が最も悪い結果となります。株式100%の場合、引き出し率3%でも約25年で資産は0になってしまいます。
ただ、驚くことに株式の割合が多い順に結果が悪いわけではありません。最も結果が良いのは、株式75%債券25%の割合です。この場合、引き出し率3.3%までは、50年間資産が持つ可能性が高いです。
結果が良い順に75%株式25%債券>50%株式50%債券>25%株式75%債券>株式100%≒債券100%の順になっています。
まとめ
トリニティスタディの30年間4%ルールは、2024年の段階でも有効であることが示されました。
シュミレーション期間を30年以上に伸ばすと、4%の引き出し率は安全ではありません。4%の引き出し率では、成功確率は90%程度です。引き出し率3.5%がより安全です。
最悪な50年間では、最も資産が長持ちする可能性が高いのは、株式75%債券25%です。3.3%の引き出し率であれば、50年間資産が持つ可能性が高いです。最悪な50年間では、株式100%の場合、結果は最悪になります。資産の枯渇のリスクを避けるためには分散が大切になります。
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